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用語 解説
IL-13 アレルギー炎症をつかさどるサイトカインで、主にTh2細胞が産生する。ぜん息などで起こる気道炎症はT細胞が産生するこのサイトカインが原因であることが知られている。
1型糖尿病 膵臓のインスリン分泌細胞が死滅するために発症する糖尿病。いくつかの原因が報告されているが、自己免疫によるものが最も多いと考えられている。生活習慣の影響が強いとされる2型糖尿病と比較して若年に多い。
2次元電気泳動 蛋白質をその電荷と分子量の差を利用して網羅的に分離するシステム。これを用いると一度に2千種類以上の蛋白質の発現変化を調べることができます。
ABP Activity Based Probe(ABP)は、ある種の酵素群においてその酵素が活性化している状態の時にのみ特異的に結合するようデザインされ、また検出可能な構造を有している化学物質(プローブ)です。例えば阻害剤などが同時に存在する場合はこのプローブは結合しません。このプローブと細胞抽出液を反応させた後にその溶液を電気泳動や質量分析装置で解析することにより、活性化している酵素の同定を行うことが出来ます。この手法により、ある酵素に特異的な阻害剤のスクリーニングなどに有効に活用できる技術がABPであり、最大の特長は、複数の類似した酵素の活性状態を一度に検出することが可能なことから、高活性で選択性の高い候補化合物のスクリーニングを効率的に行うことが出来ることです。
ACR改善率 米国リウマチ学会(ACR:American College of Rheumatology)で作成された関節リウマチの臨床症状の改善度の基準であり、20%改善率、50%改善率、70%改善率の3種類があります。各々の患者において、以下の7項目のうち,@疼痛関節数およびA腫脹関節数の20%以上の改善を必須条件として、さらにB−Fの5項目中3項目以上で20%以上の改善が認められた場合にACR 20%以上の改善ありと判定され、ACR 20%改善率はその改善例数の割合を示したものです。50%、70%についても同様に判定します。
@疼痛関節数
A腫脹関節数
B患者による疼痛の評価
C患者による全般評価
D医師による全般評価
E患者による日常生活動作の評価
F炎症マーカー:CRP(C反応性蛋白)またはESR(赤血球沈降速度)
AID(Activation−induced cytidine deaminase) 活性化したBリンパ球に発現する、シチジンのアミノ基を取り除きウリジンに変換する酵素。抗体分子の親和性成熟とクラススイッチに必須の酵素であり、AID欠損マウスでは、両者とも全く起こらない。AID欠損マウスは自己免疫疾患を基本的には発症しないが、抗体の機能が不十分なために腸内の細菌が異常増殖しており、それを抑え込むために免疫系が異常に活性化していることが知られている。
aidaマウス ヴェルディの悲劇のオペラAida(アイーダ)と、aidaマウスが重篤な自己免疫疾患になることを掛けて名付けた。
BDNF、TrkB 神経栄養因子は神経細胞の発生、生存、神経伝達などに不可欠な一群の因子であり、NGF(nerve growth factor)や脳由来神経栄養因子(BDNF; Brain-derived neurotrophic factor)がよく知られている。このうち細胞表面に発現し、BDNFの主要な受け手(受容体)となるのがTrkBである。網膜では網膜神経節細胞やMuller細胞に多く発現することが報告されている。
b-FGF (basic fibroblast growth factor:bFGF) 塩基性線維芽細胞増殖因子とよばれ、種々の細胞の増殖を促進するタンパク質。
Cbln1(シービーエルエヌ1) 神経細胞が分泌するたんぱく質。免疫系において働く「補体」と似た分子であり、同じファミリーに属する分子(C1qファミリー分子)は、炎症反応、糖代謝、冬眠など多彩な機能を持つ。近年、デルタ2受容体の細胞外領域にCbln1が結合することにより、平行線維シナプスの形態形成を制御することが分かっている。
CD34陽性細胞(造血幹細胞) 生涯にわたって絶え間なく赤血球、白血球、血小板など各種の血液細胞の源となる細胞です。分裂増殖に伴って自己複製するとともに、同時に性質の異なる各種血球系細胞へ分化します。
CD4陽性細胞 細胞表面マーカーであるCD4が陽性であるT細胞のことです。活性化されたCD4陽性細胞は、他のT細胞の機能を誘導したり、B細胞に抗体産生を誘導したりし、免疫応答を増強します。HIVはCD4陽性細胞に感染します。
cDNA complementary DNAの略。DNAもしくはRNAを鋳型として作られた、相補的(complementary)な配列のDNA。一般的にmRNAを鋳型として作られたものをさすことが多い。
cGMP Current Good Manufacturing Practice((現行の)医薬品等の製品管理及び品質管理に関する基準の略)。米国食品医薬品局の医薬品等の製造、試験に適用される品質管理システムのこと
cRNA complementary RNAの略。DNAもしくはRNAを鋳型として作られた、相補的(complementary)な配列のRNA。DNAマイクロアレイ実験においてはmRNAを鋳型に作られたcDNAを鋳型として作られます。
CRO(Contract Research Organization) 開発業務受託機関のことです。製薬会社等が行う臨床試験の運営及び管理に係わる各種業務の一部または殆ど全てを製薬会社等から受託する組織(または個人)です。
CSO(Contract Sales Organization) の略語、製薬会社から医薬品の販売に関するサービスを受託し、主に医薬品の適正な使用と普及を目的として、医薬関係者に面接の上、医薬品の品質・有効性・安全性などに関する情報の提供・収集・伝達を主な業務として行う者(MR)の業務を受託して行う機関です。
DCI ドパ脱炭酸酵素阻害剤のことで、COMTのほかに末梢でレボドパを代謝するもう一つの酵素(ドパ脱炭酸酵素)の働きを阻害する薬剤です。
DNA デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid)の略。アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類の塩基と呼ばれる成分が直列に並んだ状態で、遺伝情報を維持します。
DNAシークエンス DNAの塩基配列を決定すること。
DNAチップ 切手大のガラスまたはシリコン製の板上に数千から数万種の遺伝子断片(DNA)を規則正しく固定したもの。これを用いると一度に数千種類以上の遺伝子の発現変化をしらべることができます。
DNAマイクロアレイ ガラスなどの小さな基板上に微小な間隔で何種類ものDNAを規則的に並べて固定化させたもの。mRNAの発現を検出するためのものや、ゲノムDNAの塩基配列を解析するものなど、用途は様々。
D−セリン、D−アミノ酸 アミノ酸の1種。アミノ酸には、構造の違いからL型とD型が存在し(互いに光学異性体)、我々の根源的な生命活動を担うたんぱく質は、主にL−アミノ酸により構成されている。近年の計測技術の進歩により、生体内でもD−アミノ酸の存在が確認され、特に、D−セリンは脳内に豊富に存在していることが分かってきた。D−セリンは多くの脳領域において恒常的に存在しているのに対し、小脳では幼若期に豊富に存在し、その後、消失してしまう。近年、前脳におけるD−セリンは統合失調症や筋萎縮性側索硬化症を含む種々の病態に深く関与していることが報告されているが、小脳におけるD−セリンの役割については、長い間不明であった。
E4BP4 生体リズムを制御する概日時計の発振を調節する転写因子として同定された分子。最近では、NK細胞の分化にも関わっていることが示されている。増殖因子として知られるサイトカインIL-3の産生を制御する核内因子として、NFIL-3とも呼ばれる。
EORTC European Organization for Research and Treatment of Cancer (欧州がん研究・治療機構)の略称であり、ヨーロッパの国々が共同してがんの研究や治療を推進するための組織で、国際的に共通する治療ガイドラインの作成などを行う機関です。
ES細胞(Embryonic Stem cell:胚性幹細胞) 発生初期段階の細胞塊より作られる幹細胞細胞株。生体外にて、理論上すべての組織に分化する全能性を示す。ES様細胞とは、ES細胞の機能を真似て人工的に作った細胞。
EZH2 ポリコームタンパク質とよばれる遺伝子発現調節タンパク質複合体の一員としてエピジェネティックな遺伝子発現調節に関与しています。EZH2 はヒストンH3 コアタンパク質の27 番目のリジンをメチル化し、その領域にある遺伝子の転写を抑制します。
FDG-PET 悪性腫瘍の細胞は正常細胞や良性腫瘍の細胞に比べて、ブドウ糖をエネルギー源として利用する割合が非常に大きくなっています。[18F]FDG-PET で利用する放射性医薬品である[18F]FDG([18F]フルオロデオキシグルコース;2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose)はブドウ糖と似た構造を持っているため、ブドウ糖の利用の多い細胞には多く取り込まれます。しかし、ブドウ糖と異なりエネルギー源として利用されることは無く、細胞にたまっていく性質を持っています。これを利用して、細胞内にたまった[18F]FDG を検出することで腫瘍を検出しようというのが、腫瘍[18F]FDG-PET の理論です。
FTD技術 乳化、分散、ナノ粒子、ナノカプセル形成、多孔質・多層薄膜等によって、目的とするケミカルを「処方化、製剤化」(Formulation)して、「目的の部位」(Targeting)に「適切な量を、適切なタイミングで届ける」(Delivery)富士フイルムの技術。
G−CSF 感染などの防御反応として生体に有利に働く好中球を選択的に増やす造血因子。主に化学療法後の好中球減少症や造血幹細胞移植時の好中球の増加促進などに用いられる治療薬。英語の略号でG-CSFと表記することが多い。
HbA1c 過去2〜3 ヵ月間の平均血糖値を示す指標です。
HLA3座ホモ HLA3座ホモ HLAは細胞表面にあるタンパク質である。HLA?A, HLA?B, HLA?DRなど多数の遺伝子座があり、それぞれがさらに複数の型に分けられる。臓器移植などの際に、ドナーとレシピエントのHLA型が合わないと免疫拒絶反応が起こる。HLA?A, B, DRの3座の型がドナーとレシピエントで一致している場合は移植成績が良いことが知られている。通常、それぞれの遺伝子座について両親から一つずつ異なる型を受け継ぐが、両者が同一だった場合にホモと呼ばれる。本研究では、HLA?A, B, DRの3座について両親から同じ型を受け継いだと考えられる場合にHLA3座ホモとした。
ICH-E2E 市販後の医薬品安全性監視についてのガイドラインです。特に新医薬品の市販後早期における安全性監視活動の立案支援が目的で、予測予防対応型の医薬品安全性監視について規定しています。
IL-10 抑制性のサイトカインとして知られ、Th1細胞からのINF-γ産生を抑制するとともに、マクロファージからのIL-1、IL-6、Il-12、TNF-2の産生を抑制する働きを持つ。また、マクロファージに働いて補助シグナル分子CD80/CD86の発現を抑制することで、T細胞活性化補助機能を抑制する働きを持つ。
IND Investigational New Drug Application:新薬治験開始
iPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞) 2007年11月21日、京都大学の山中 伸弥 教授らはヒト皮膚細胞に4つの遺伝子を導入することで、ES様細胞のiPS細胞の確立を報告しました。また米国ウィスコンシン大学のジェームズ・トムソンらも同様の発表を行いました。
iPS細胞(人工多能性幹細胞) 皮膚細胞などの体細胞に遺伝子などを導入し、細胞核を初期化することにより作製でき、胚性幹細胞(ES細胞)のように無限に増え続ける能力と体のあらゆる組織細胞に分化する能力を有する多能性幹細胞。山中教授らの研究グループは、2006年にこの画期的な技術の開発を発表し、生命科学の領域に様々な細胞を無限に作り出すことのできるツールをもたらした。iPS細胞は、受精卵を利用して作られるES細胞と違い、倫理的問題を回避できる。
IR/MARベクター DNA複製に必要なIR(Initiation Region)配列とMAR(Matrix Attachment Region)配列が存在し、DNAの複製方向と何らかの遺伝子の転写方向が衝突する向きに配置されているベクターです。 その衝突点にMAR配列が存在することによって、がん細胞が持つ遺伝子自律複製機構を効率よく利用することができます。
Janus Kinase(JAK) 関節リウマチ等の自己免疫疾患に関与する、細胞の増殖・分化などに関わる信号の伝達に重要な役割を果たすチロシンキナーゼ(タンパク質を構成するアミノ酸のひとつであるチロシンにリン酸を付加する機能を持つ酵素)
LTR レトロウイルスゲノムDNAの両末端で重複している長い末端反復配列です。LTRはU3、R、U5部分からなりU3部分にウイルス自身とその近傍の遺伝子の転写活性を高めるエンハンサー機能があります。
MH技術 JITSUBOが保有する新規ペプチド製造技術、Molecular HivingTM技術の略。アミノ酸のカルボキシル基(C末端)にTagと呼ばれるエステル型保護基を導入することで、アミノ酸を1個ずつ縮合する製造プロセスの工程毎にTag-ペプチドを固液分離(下段説明参照)することが容易となります。これにより高品質の医薬品製造に欠かせない分離精製プロセスを製造工程に組み込むことが可能となります。また、Tag-ペプチドは、Tagをはずすことなく工程分析が可能であり、SPPS(固相ペプチド合成法)に比べ、より医薬品の製造工程における品質管理が容易となる。
mRNA messenger RNAの略。遺伝子情報は、まずmRNAに変換(転写)されなければ機能しません。mRNAに転写された情報はタンパク質を作る(翻訳)ための設計図になります。
Mullerグリア細胞 網膜や脳などの神経組織を構成する主な細胞は神経細胞(ニューロン)だが、それ以外はグリア細胞とよばれる。以前は神経細胞の周囲をかためるだけの脇役と考えられていたが、最近ではさまざまな役割をもつことが注目されている。その中でもMuller細胞は網膜にだけ存在する、特殊なグリア細胞である。
naked DNA 遺伝子がうまく働くためには、遺伝子が細胞の中に入る必要があるが、遺伝子はそのまま細胞に近づけても細胞の中に入っていくことはできない。そこで、細胞の膜を突破し、細胞の中に遺伝子を運ぶ役目をする「運び屋」が必要になる。通常、この「運び屋」としてウイルスを改良して使うことや、リポソームに導入遺伝子を封入して細胞内に取り込ませる方法が一般的だが、本HGF 遺伝子治療薬では、プラスミドDNAと呼ばれる遺伝子を環状にしたものを使用する(naked DNA 法)。プラスミドDNA だけでは、細胞の膜を突破する力は弱いが、筋肉内に注射する場合は遺伝子を発現することができる。この方法は、ウイルスやリポソームの持つ感染性や細胞毒性を心配する必要がなく、安全性の高い方法である。
Nanog遺伝子 胚性幹細胞(ES細胞)で多く発現している遺伝子で、ES細胞の増殖能や多分化能の機能に必要とされている遺伝子。
NBS試薬 質量の異なる2種類の安定同位体試薬により、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種トリプトファンを選択的に標識する試薬キットです。あるがん細胞と高転移能を獲得したがん細胞から抽出したタンパク質を、異なる質量の試薬でそれぞれ標識した後に質量分析装置で測定することにより、がん細胞とその高転移能獲得がん細胞に含まれるタンパク質の種類や量の違いが解析できます。
ncRNA たんぱく質に翻訳されないRNAの総称。二〇〇〇年以降、国際共同研究を通して、RNAの半分以上がncRNAであることが明らかになってきた。遺伝子の数は人とほかの生物を比較しても大きく変わらないが、ncRNAの数は生物の進化に比例するように増えており、生物の複雑さに大きく関与すると予想されている。 ncRNAには「マイクロRNA」や「パイRNA」などさまざまな種類があり、探索や機能の解明が進んでいる。特に最近研究が盛んなマイクロRNAは一つで十種近い役割を持つともいわれ、発がんに関係するという研究が多数報告されている。RNA干渉を利用すれば創薬ターゲットになる可能性も指摘されている。
NODマウス(non−obese diabetic mouse) 加齢により一部のマウスが1型糖尿病を自然発症するモデルマウス。
NOGマウス 免疫をつかさどる主な細胞にはT細胞とB細胞があり、T細胞(胸腺)欠損マウスをヌードマウス、T, B両細胞欠損マウスをSCIDマウス(Severe combined immunodeficiency;重症複合型免疫不全症マウス)と呼んでいます。SCIDマウスには、もう一つの重要な免疫担当細胞で、がん細胞等の異物を排除する機能を持つナチュラルキラー(NK)細胞が残存しています。NOGマウスは(T・B細胞に加え)このNK細胞も存在しない超免疫不全マウスです。がん細胞等の生着性が極めて高いマウスなので、免疫学だけでなく再生医学やがん研究の分野でも利用され始めています。
Orphan Drug(オーファンドラッグ) 一般的に希少疾病医薬品といわれ、医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が少ない難治疾病に対する開発可能性の高い医薬品を示します。オーファンドラッグとしての指定を受けた場合、税制上の優遇、開発助成金の援助、特許や使用権の延長などの優遇措置が講じられます。
PDE1阻害薬 PDE1阻害薬は、統合失調症および他の神経疾患や精神疾患(アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害など)に伴う認知機能障害に対して開発を行っている新規の経口治療薬です。本薬は、これらの疾患に関連する運動機能障害を改善する可能性も検討されています。また、PDE1に対する親和性が非常に高く、PDE1を競合的に阻害します。他のPDEに比べてPDE1に対する選択性が極めて高く、それ以外の酵素、受容体、イオンチャネルなどには作用しません。
PF カテーテル/PF カテーテルU 流涙症の治療に使用される医療機器です。 涙道の狭窄・閉塞部位をあらかじめ適切に拡張した後、本製品を涙道内に挿入・留置します。 一定期間留置した後、本製品は涙道から取り除かれます。涙道の狭窄・閉塞部位に本製品を一定期間留置することで、人体の修復作用によって涙道が再形成され、管腔を長期間維持することを目的としております。
PGx Pharmacogenomics(薬理ゲノミクス)の略。近年進歩が著しいゲノム科学を利用する事により、「効率的な創薬研究開発」と「個の医療」を目指す研究分野。特定疾患群の患者に共通の遺伝情報を把握し、その疾患に最適な薬剤の開発を行ったり、患者個々の遺伝的特徴の差異を把握することにより、患者ごとに最適な薬剤を選択したり、最適な用量を決定する事を目的としています。これにより、従来に比べて、より効果的で安全な投薬を行えるようになると考えられています。
POC(Proof of Concept) 研究開発段階にある新薬候補について、その有効性や安全性をヒトで探索し、その探索結果が創薬開発における開発確度を高めることにつながる最も大きなマイルストンの一つ
RNA リボ核酸(Ribonucleic Acid)の略。アデニン(A)・ウリジン(U)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類の塩基と呼ばれる成分があります。r-RNA、t-RNA、m-RNAなどの種類があり、遺伝情報の維持や発現に関与します。
RNAi医薬 核酸医薬の一種であるRNAi医薬(RNA interference)は、酵素や受容体等のタンパク質に作用する従来の低分子医薬とは異なり、各種疾患の原因となるタンパク質を作り出す遺伝子(mRNA)に直接・選択的に作用する特徴を有しています。RNAi医薬により、創薬ターゲットの拡大および創薬期間短縮等の生産性の著しい向上が期待できることから、今後の創薬研究におけるパラダイムシフトにつながる可能性のある革新的技術として注目されています。
RNA干渉実験 遺伝子の発現により転写されたRNAが、相補的な塩基配列を持つ二本鎖RNAと結合して、分解される現象を利用した方法。人工的に合成した二本鎖RNAを細胞へ導入することにより、特定の遺伝子の発現が抑制される。この手法によって、その遺伝子の機能を調べることができる。(A. Fire教授とC. C. Mello教授らがこの技術開発により2006年ノーベル医学生理学賞受賞)
RNA干渉薬 様々な生命現象を担うたんぱく質ができあがる過程で、DNA(デオキシリボ核酸)上の遺伝情報が、いったんRNAに写し取られる。病気の原因遺伝子を突き止め、人工RNAでこの転写を阻む(RNA干渉)ことができれば、効果的な治療薬が実現します。RNA干渉は昨年のノーベル生理学医学賞の授賞テーマにもなっています。 がんや感染症などをターゲットに薬の研究開発が進んでいます。
RNA合成 RNAの研究において、これまでの合成可能な範囲は 84塩基長であるが、RNAとして純粋に単離されたものではなかった。今回、合成に成功した110塩基長のRNAは単離精製され、さらにその生物学的活性をも検討することが出来たことに意義があります。また、合成以外にRNAをとる方法としては、酵素法がありますが、これは生物材料から極めて少量しか採取できないのが現状です。
RNA分解酵素 ニュージャージー医科歯科大学の井上正順教授は、大腸菌のトキシンのひとつであるMazFが、メッセンジャーRNA中のACAの塩基配列を特異的に認識して切断する機能を有する酵素であることを発見しました。
RNA分解酵素 ニュージャージー医科歯科大学の井上正順教授は、大腸菌のトキシンのひとつであるMazFが、メッセンジャーRNA中のACAの塩基配列を特異的に認識して切断する機能を有する酵素であることを発見し、メッセンジャーRNAインターフェレースと命名しました。
Sezary症候群 菌状息肉症とともに、CTCLの代表的疾患で、紅皮症、全身のリンパ節の腫脹、血液中にセザリー細胞と呼ばれる異型リンパ球(T細胞)が現れることを特徴とします。掻痒を伴う紅皮症、脱毛、掌や踵の過角化が見られることがあります。菌状息肉症から進行する場合(典型的)とそれ以外から発症する場合があり、菌状息肉症と比較すると悪性度の高いリンパ腫です。
SHIV サルを自然宿主とし、サルでエイズを発症するSIVと、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)のキメラウイルスです。アカゲザルやカニクイザルといった医学実験用サルを用いて動物モデル系に利用することが出来るウイルスです。
SMO(Site Management Organization) 治験実施施設支援機関のことです。医療機関が行う臨床試験の実施に係わる業務の一部を医療機関から受託する組織(または個人)のことです。
SNPs(スニップス) Single Nucleotide Polymorphisms(一塩基多型)の略。複数の人間のDNAを調べると、DNA内の塩基に数百塩基から数千塩基に1個程度異なる箇所があり、一塩基だけ異なる箇所をSNPsと呼ぶ。SNPsの個体差により病気の発現や薬の効き方に影響があるものと考えられています。
Sox2遺伝子 Nanog遺伝子と同様ES細胞に多く発現している遺伝子。
Src 蛋白質酵素の一つ。活性化に伴い他の蛋白質をリン酸化する。Srcをコードする遺伝子であるSrc遺伝子は初めて見つかった癌原遺伝子。
S-アデノシルメチオニン合成酵素II アミノ酸代謝酵素のひとつ。メチオニン(アミノ酸の一種)からS-アデノシルメチオニンの生合成を触媒する。
TK測定 Toxico Kinetics(トキシコキネティクス)の略語で、毒性試験において薬物が体内に入った時の全身的暴露を評価するために薬物動態データを得ることをいいます。医薬品の開発における毒性試験の不可欠な構成要素であり、ヒトにおける安全性を評価する一環としての毒性試験の理解や臨床試験データとの比較に役立ちます。TKにおいて適切なパラメーターを測定することにより、試験動物種における反復投与時の薬物動態データを得ることができます。従って、適切な試験計画を立てることにより、試験の重複を避け、必要な動物数を減らせます。
TLR マクロファージや樹状細胞表面に存在する菌体成分センサー。TLRが活性化されるとTNFαやIL−12と言った炎症性サイトカインが産生される。また、IL−12はNK細胞やT細胞から強力な炎症性サイトカインIFNγを誘導する。
TM-Srcus Transmembrane fluorescent indicator for detecting Src activation that can be custom-madeの略。Srcの活性化を検出するキメラ蛋白質。
T細胞 リンパ球の1つで、機能を反映するサイトカインを産生することにより、免疫反応を制御する司令塔的役割を持つリンパ球。
UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ 解毒酵素のひとつで、様々な有害物質にグルクロン酸を付加しグルタチオン抱合体を形成させる酵素です。有害物質のグルクロン酸抱合体は毒性が低下すると共に、水溶性が増し体外に排出されやすくなります。
VTE(Venous Thromboembolism) 肺血栓塞栓症(Pulmonary Embolism; PE)とその原因となる深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis; DVT)を合わせてVTEと呼びます。DVTは深部静脈に血栓ができる疾患です。一方、PEは、主に深部静脈で形成された血栓が血流に乗って肺に到達し肺動脈を閉塞させ、急性の呼吸循環障害を引き起こす疾患です。DVTは下肢や腹部等の手術後に多く発生し、PEとなった場合の致死率も高いため、その予防が極めて重要です。
wearing-off現象 レボドパの薬効時間が短縮し、 レボドパ服用後数時間を経過するとレボドパの効果が消退する現象を言います。レボドパの効果が現れている“on”時間と、レボドパの効果が切れている“off”時間をレボドパの服薬時間に応じて1日に何度も繰り返すことが特徴です。レボドパ治療開始後5年で約30%、7年で約50%の患者さんに発現するとの報告があります。
Wnt Wnt とは、マウス乳がんウイルスによる乳がんの原因遺伝子の産物として同定されたということと、ショウジョウバエの体節形成にかかわる遺伝子との相同性から名づけられた体軸形成、中枢神経発生、器官形成にかかわる糖蛋白質です。 Wnt 経路には、細胞分化・背側形成にかかわるWnt/β-カテニン経路、平面内細胞極性・原腸陥入運動にかかわるWnt/PCP 経路、胚葉分離にかかわるWnt/Ca2+経路、筋新生の制御に関与する経路、などが知られています。
β-アミロイド アルツハイマー病患者の脳で多く見られる老人斑の構成成分。この産生の増大および蓄積がアルツハイマー病の原因ではないかと考えられている。
β-カテニン カテニンは細胞骨格関連蛋白質でα,β,γのサブクラスが知られています。β-カテニンは、カドヘリンを介した細胞接着や細胞骨格形成に重要な役割を果たすと同時に、Wnt シグナル伝達系の媒体として遺伝子発現調節にも関与しています。β-カテニンの発現量は、正常細胞では制御されていますが、様々な腫瘍で制御機構が低下し、細胞内β-カテニン量が増えていることが認められており、腫瘍組織の特徴の一つと考えられています。
アゴニスト 生体内の受容体に働いて、神経伝達物質 や ホルモン などと同様の作用を発現する作動薬のこと。
アナフィラキシーショック 特定の物質が摂取されて体内に抗体ができ、その物質が再度、体内に入ると、初回よりも急速に激しくおこるアレルギー反応のこと。
アバスチン 「アバスチンR」は、血管新生(がん組織に栄養と酸素を供給する血管網の伸長)を阻害する初めての治療薬です。「アバスチンR」は、血管新生における重要な因子であるVEGF(血管内皮増殖因子)と呼ばれる生体内の蛋白質を標的として、がんの増殖と全身への転移に不可欠な血液供給を遮断します。「AvastinR」は2006年7月現在、米国および欧州など88カ国で承認されています。「アバスチンR」は、ジェネンテック社(アメリカ)の登録商標です。
アフェレシス 血液を体外循環により血漿分離用フィルターに通し、分離した血漿を廃棄して正常な血漿と交換するか、または、分離した血漿中の病因物質を除去した後に再び体内に戻す療法を言う。血漿を分離せずに、全血から直接病因物質を除去する場合もある。
アプタマー アプタマーは明確な三次元構造を有する一本鎖の核酸であり、抗体同様、標的分子に結合することにより、薬効を示します。アプタマーは、高い特異性と親和性、化学的安定性、低い免疫原生、タンパク質相互作用など、低分子化合物と抗体の両方の最適特性を兼ね備えています。生物学的製剤であるモノクローナル抗体とは異なり、アプタマーは化学的に合成されます
アミロイド前駆体蛋白質(APP) 家族性アルツハイマー病原因遺伝子。切断されることによりβ-アミロイドを産生する。
アンメットメディカルニーズ 患者や医師から強い要望があるにも関わらず、未だ有効な治療法がない医療ニーズ
インスリン感受性 血液中にある糖(グルコース)を細胞内に取り込むとき、インスリンというホルモンが糖の量に対して適正量で機能する場合、インスリン感受性があるという。逆に糖の量に対して多量のインスリンがなければ糖を利用できない状態のことを、インスリン抵抗性という。インスリン抵抗性が進むと、多量のインスリンを使っても糖を利用できなくなり、糖が血中に溜まり糖尿病を引き起こす。
インターロイキン10(IL−10) 抗炎症性サイトカイン。マクロファージや樹状細胞に作用して炎症性サイトカインの産生を抑制する。
インターロイキン−6(IL-6) IL-6は、免疫系におけるB細胞を抗体産生細胞に分化誘導する因子として発見されたもので、その後の研究により、免疫応答のみならず、造血系、神経系の細胞増殖や分化、炎症反応など多様な生理活性を有し、関節リウマチ、キャッスルマン病、クローン病、多発性骨髄腫などの種々の免疫異常や炎症性疾患の病態に関わっていることが知られています。
インフォームド・コンセント 被験者が、臨床試験に関するあらゆる角度からの説明が十分なされた上で、自由な意思によって試験への参加に同意し、書面によってそのことを確認することです。インフォームド・コンセントは、被験者の記名捺印または署名と日付が記入された同意書をもって証明されます。
エイズウイルス(HIV) 後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスです。HIVはレトロウイルス科レンチウイルス属に属します。HIVは変異しやすいウイルスのため、ワクチンや抗HIV剤の開発を阻んでいます。HIVがT細胞などに直接感染することにより、あるいは感染細胞が非感染細胞に融合することにより、体内に広がります。HIVは血清学的・遺伝学的性状の異なるHIV-1とHIV-2に大別されます。HIV-1は、世界流行の主体となっており、全世界に分布していますが、HIV-2は主に西アフリカ地域に限局しています。これは、HIV-2がHIV-1と比較して感染性や病原性が低いためと考えられています。
エピジェネティックス(epigenetics) 遺伝子機能の選択的な活性化・不活性化のための機構の一種で、DNA の塩基配列の変化を伴わずに細胞分裂後も継承される遺伝子機能の変化のしくみ、またはそれを研究する学問領域を指します。また、ゲノムのエピジェネティックス状態の総体を「エピゲノム(epigenome)」と呼びます。
エピソーマル・プラスミド エピソーマル・プラスミド環状DNAの一種。細胞の染色体には取り込まれずに、自律的に複製するプラスミド。
エレクトロポレーション 形質転換法の一種で、細胞懸濁液に電気パルスをかけることで細胞膜に微小な穴を空け、DNA 等を細胞内部に送り込むことで形質転換する方法。電気穿孔法とも呼ばれます。
オ-ファンドラッグ 患者数が少ない疾患について、医薬品の開発を促進するための制度。
がん幹細胞 幹細胞とは、組織や臓器に成長する元となる細胞であり、各臓器に固有に存在しています。がん組織中にもがん幹細胞と呼べるような細胞の存在が確認されており、治療抵抗性、再発あるいは転移に重要な役割を果たしていると考えられています。従って、がん幹細胞に対して作用する薬剤の開発が期待されています。
キナーゼ キナーゼはたんぱく質のリン酸化反応を行う酵素の総称であり、細胞内の種々の機能を調整しています。ヒトには500 種類以上のキナーゼが存在することが知られており、種々の疾患に関与すると考えられています。
キネシン 微小管モーター蛋白質。キネシンは微小管の上を−から+方向に走ることにより、さまざまなものを微小管の+端へと輸送する。
キノンレダクターゼ 有害なキノン化合物を還元する解毒酵素のひとつです。還元されたキノン化合物はその後、グルタチオン S-トランスフェラーゼやUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼなどによって抱合化され、体外に排出されてゆきます。
キメラマウス マウス初期胚の中にES細胞などの多能性幹細胞を移植することにより誕生する、2種類の細胞に由来するマウス。毛色が茶色のマウスから作られた多能性幹細胞を、黒色マウスの初期胚に移植すると、誕生するキメラマウスは黒と茶がまだらになります。ヤギの体、ライオンの頭、そしてヘビの尾をもつ神話上の怪物"キメラ"にちなんで名付けられました。
グリア細胞 神経膠細胞。脳には神経細胞のほかにグリア細胞が存在する。グリア細胞はこれまで、神経細胞の活動を支える“脇役”として軽視されてきたが、近年、グリア細胞の脳機能における重要性が注目されている。平行線維シナプスは、バーグマングリアと呼ばれるグリア細胞によって密に覆われている。
グルタチオン グルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸からなる生体内解毒物質です。グルタチオンは解毒酵素のグルタチオン S-トランスフェラーゼの基質として働くほか、単独でも分子内のチオール基を介して活性酸素などを取り去る作用があります。
グルタチオン S-トランスフェラーゼ 解毒酵素のひとつで、様々な有害物質に還元型グルタチオンを付加しグルタチオン抱合体を形成させる酵素です。有害物質のグルタチオン抱合体は毒性が低下すると共に、水溶性が増し体外に排出されやすくなります。
グルタミン酸受容体、デルタ2型グルタミン酸受容体(デルタ2受容体) グルタミン酸受容体は、シナプス前部から放出されるグルタミン酸を受け取るために神経細胞が備える細胞膜表面に存在するたんぱく質。これを介して神経情報が伝えられる。デルタ2受容体はグルタミン酸受容体ファミリーの一員であり、小脳のプルキンエ細胞にほぼ選択的に発現し、シナプスの形態形成や運動記憶・学習を制御している。これまで、D−セリンがデルタ2受容体に結合することは知られていたが、この結合に生理的意味があるのかについては、謎のままであった。
クロストリジウム・ディフィシル感染症 クロストリジウム・ディフィシルは、大腸内部に感染し毒素を産生する細菌です。感染・増殖により大腸炎や重篤な下痢を発症し、最悪の場合は死に至ります。腸内細菌が正常に発育している環境ではクロストリジウム・ディフィシルが感染しても増殖は抑制されています。しかし、他疾患の治療のために抗菌スペクトルの広い抗菌剤を服用すると腸内細菌叢が損なわれ、クロストリジウム・ディフィシルが異常増殖するという典型的なケースがあります。クロストリジウム・ディフィシル感染症は有効な治療法が限られ、再発率も高いことから、大きなアンメット・メディカルニーズがあると考えられています
クロストリジウムヒストリチクス菌 クロストリジウムヒストリチクス菌は、コラゲナーゼのような種々のたんぱく質分解酵素を分泌して組織を破壊し増殖することが知られており、その酵素活性の強さから、本菌由来のコラゲナーゼは、動物組織からの細胞の分離など生化学・生理学の研究用ツールとして、広く利用されています。
ゲノミクス ゲノム科学。ゲノム(遺伝情報)に係る一連の科学研究。一つ一つの遺伝子を個別に研究するのではなく、すべての遺伝子を網羅的に取り扱おうとする学問。通常、数千個以上の大量の遺伝子の配列やそれらの発現量の変化などを調べ、その機能と関連を研究します。
コラゲナーゼ 動物の結合組織や骨格の維持に重要な役割を果たす線維状のコラーゲン蛋白を分解する酵素の一つです。
コンピュータを用いた薬物設計技術 たんぱく質の機能を制御する低分子化合物を、コンピュータを用いて設計する技術であり、従来の高速スクリーニング技術を用いた手法に比べ、より効率的に医薬品候補化合物を創製することができると期待されています。
サイトカイン 細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達をするものをいう。特に免疫、炎症に関係したものが多く、極めて微量でその効果を発揮する。細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは創傷治癒などに関係するものがある。
サイトカイン 細胞から放出され、細胞間の相互作用を媒介するタンパク性因子の総称。免疫、炎症、生体防御において重要な役割を担う
サイトカイン 細胞が産生する分泌たんぱく質で、それに対する受容体を持つ細胞に働き、細胞の増殖・分化・機能発現を行うものの総称。
サイトカイン 細胞同士の情報伝達に関わる、さまざまな生理活性を持つ可溶性タンパク質の総称。
サイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1) 炎症性サイトカイン、特にIFNγのシグナルを阻害する遺伝子。さまざまな炎症抑制に関与することが知られている。
シナプス 神経細胞と神経細胞のつなぎ目。シナプスの前側にある神経細胞からグルタミン酸などの神経伝達物質が放出され、後ろ側の神経細胞がこれを受け取ることによって情報が伝達される。
スイッチOTC薬 これまで医療用医薬品に限って使用されていた有効成分を、一般用医薬品(薬局・薬店等で購入できる医薬品)に転用した医薬品
タンパク質医薬品 抗体、遺伝子組み換えタンパク質を基にした医薬品
たんぱく質修飾活性化酵素Uba5 たんぱく質は生合成された後、リン酸化、糖鎖付加、脂質付加、メチル化、アセチル化等により、翻訳後修飾され、これら修飾により機能や活性が調節される。高等生物では遺伝子配列に基づき合成されたたんぱく質が、直接機能を発揮することは少なく、多くは様々な翻訳後修飾を受けることで機能の多様性が発揮される。Uba5はユビキチン様たんぱく質Ufm1を活性化する酵素。Ufm1はUba5酵素により活性化された後、Ufc1酵素に転移され、最終的に細胞内のたんぱく質を修飾し、機能変換を引き起こす。
データマネジメント・統計解析 臨床試験により集積された調査票データの精査、固定、集計、解析、各種会議用資料の作成等一連のデータを処理する業務です。
デュピュイトラン拘縮 デュピュイトラン拘縮は、手のひら内部の腱膜と呼ばれる線維組織の束が肥厚し、病態の進行とともに手指の屈曲拘縮(関節が動かなくなる状態)が生じる疾患です。北欧系の白人に多い疾患ですが、発症機序については不明な点が多いようです。「ザイアフレックス」は、これまで主に手術で治療が行なわれていたデュピュイトラン拘縮に対して、唯一適応を持つ薬剤です。
ドーパミン神経細胞 ドーパミン神経細胞神経細胞の一種。神経伝達物質としてドーパミンを放出する。多くのパーキンソン病では、中脳黒質にあるドーパミン神経細胞の変性が主な病理として知られている。
トキシコゲノミクス 医薬品の候補物質を細胞等に暴露して、遺伝子レベルで毒性発現のメカニズムや、毒性の予測について研究します
バイオインフォマティクス 生物情報科学。情報科学と生命科学の融合で生命情報処理技術と言われています。ゲノムの塩基配列情報や蛋白質の構造情報を電算処理して利用する技術です。
バイオチップ たんぱく質やDNA(デオキシリボ核酸)などの生体物質の量や性質を調べる薄い板状の解析器具で、おおむね親指程度の大きさ。くぼみや細かい溝が刻まれた中央部に血液などの液体試料を垂らし、専用の読み取り装置でDNAなどの量を測定します。測定対象ごとにDNAチップ、たんぱくチップなどに分類されます。 最も開発が盛んなのはDNAチップ。現在はバイオ研究用途が中心で国内の市場規模は約五十億円。東芝などが、子宮頸(けい)がんの早期発見用チップを厚生労働省に承認申請し、国内第一号の診断チップになると注目されています。
バイオポリマー バイオポリマーは生体高分子とも呼ばれ、工業的に合成されたポリマーに比較し、生物によって分解されやすい特性があり、医療に応用されています(ポリマーとは、低分子量の化合物が、複数、結合した化合物)。
バイオマーカー 尿や血液中に含まれる生体由来の化学物質で、疾患の罹患の有無、疾患の状態や変化、治癒の程度を特徴づける指標(マーカー)です。代表的なバイオマーカーとしては、血糖値やコレステロール値、肝機能の指標となる血清中のGPT、GOTなどが挙げられます。
バイオマーカー 生体内の生物学的変化を定量的に把握するための指標(マーカー)となるものをバイオマーカーと呼ぶ。生体由来のDNA、RNA、蛋白質、または蛋白質断片、低分子化合物などの物質が該当する。
ヒストンタンパク質 クロマチン構造を形成するタンパク質群。ヒストンタンパク質H3の4ないし9番目のアミノ酸(リジン)のメチル化が、細胞の分化状態や細胞記憶に影響する。
ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞) iPS細胞人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)のこと。皮膚細胞などの体細胞に特定因子を導入することにより樹立される。胚性幹細胞(ES細胞)のように無限に増え続ける能力と体のあらゆる組織細胞に分化する能力を有する多能性幹細胞である。
ヒト間葉系幹細胞 骨髄などから得られる間葉系幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞など、間葉系に属する細胞への分化能をもつとされる細胞で、骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されています。さらに、胚葉の差をこえて神経細胞や肝細胞に分化するという報告もあり、興味がますます高まっています。i一方で、間葉系幹細胞は、採取後数週間で増殖・分化能が激減するので再生医療への応用を狭めています。
ファーマコゲノミクス 個人ごとの遺伝子の差異に応じた医薬品の効果や副作用の発生状況の違いなどを研究します。
ファ-ストトラック HIVなど、重篤であったり、生命に大きな支障をきたすような疾患の治療薬や特殊性の高い治療薬に対し、治験期間を短縮し早期に認可する特例措置。
ブドウ糖負荷試験 被験者に75gのブドウ糖を飲んでもらい、直前と2時間後の血糖値を測定して糖尿病かどうかの判定を行うための試験。空腹時が110mg/dL未満かつ2時間後が140mg/dL未満なら正常型、空腹時が126mg/dL以上もしくは2時間後が200mg/dL以上であれば糖尿病型と判定される。どちらでもない場合を境界型という。 −日本糖尿病学会
プロスタグランジンE2(PGE2) アラキドン酸から生合成されるエイコサノイドの1つで、発熱、疼痛、血管拡張、胃液分泌抑制や破骨細胞による骨吸収、分娩などにさまざまな生理機能を有する。受容体にはEP1、EP2、EP3、EP4の4種類があり、マクロファージや樹状細胞ではEP4を介して免疫抑制機能があることが知られていた。
プロテオーム解析 プロテオーム(proteome)とはタンパク質とゲノムを組み合わせた造語であり、ゲノムが一個の生物の持つ全ての遺伝情報を指すのに対し、プロテオームは、細胞内で発現している(発現する可能性をもつ)全タンパク質のことを指します。 生体内では、多数の遺伝子から作られる多様な種類のタンパク質が働いて生命活動を支えていますが、それらのタンパク質の構造や機能は、これまでは膨大な時間と労力を費やして個別に単離して解析するしかありませんでした。しかし近年になって、微量のタンパク質断片の質量を正確に測定することができるようになり、生物のもつタンパク質の構造や機能を網羅的に解析することをプロテオーム解析といいます。
プロテオーム解析 ある生物が持つゲノム情報によって作られる全てのタンパク質のセット、またはある細胞がある瞬間に発現している全てのタンパク質のセットをプロテオームと呼ぶ。個々のタンパク質の構造や機能、細胞や組織内で発現しているタンパク質の網羅的な解析によるタンパク質間相互作用の理解を目指した研究をプロテオーム解析と呼ぶ。複雑なタンパク質間相互作用の理解は、より効率的な診断手法や治療法の開発が可能になると考えられている。
プロテオミクス 多くの病気の原因となる分子は遺伝子によって表現される蛋白質です。体には様々な細胞があり、その活動を支えるのも、違いを生み出すのも蛋白質です。この1つの細胞や組織において発現している全蛋白質を集合的にプロテオーム(proteome)と呼び、一般的に特定の細胞や組織で作られる全蛋白質を明らかにし、それらの働きや相互作用を分析することをプロテオミクス(proteomics)と言います。つまり、生体内の細胞や組織で作られる蛋白質の構造と機能を明らかにし、病気の仕組みや進行の管理、治療薬の効果などにおける蛋白質の役割を直接理解し、最終的には治療薬開発に役立てようという総合的研究がプロテオミクスです。
プロテオミクス解析 細胞内のタンパク質複合体を同定する技術。細胞から複合体を精製し、質量分析装置を使って複合体の構成因子を決定する。(図2)
プロドラック 体内で活性代謝物になることで、はじめて作用を示す薬のことを、プロドラックと呼んでいます。
ペイロニー病 ペイロニー病は、陰茎頚部にコラーゲンのかたまりが形成されることにより、陰茎の屈曲収縮が起こる疾患で、これにより勃起不全となり、結果として性機能不全につながります。中・高年で発症することが多く、糖尿病・ED・デュピュイトラン拘縮などと併発する可能性があると言われていますが、正確な患者数は不明です。
ベクター ベクターとは運び屋という意味です。遺伝子を細胞内に入れる運び役で、2重鎖の環状DNAや無毒化したウイルスなどが使用されます。
ペプチド医薬品 バイオ医薬品開発が進む中、蛋白質のアミノ酸配列のうち、ごく一部の配列(ペプチド部位)が生理活性を担っていることが再認識されてきた。ペプチドは、蛋白質に比べて分子量がはるかに小さく有機合成が可能であること、また構造活性相関も容易に比較できるという期待から、次世代の医薬品として注目を集めている。ペプチド医薬品は、複数のアミノ酸が結合した構造を持つ。多くはアミノ酸の数(残基数)5〜50個から成る(5mer〜50merと表記)。その製造法としては、一般的に20merまでのペプチドでは、固相ペプチド合成法(Solid Phase Peptide Synthesis、以下SPPS)、液相ペプチド合成法(Liquid Phase Peptide Synthesis、以下LPPS)などの有機合成法で製造され、50mer以上のペプチドでは、培養法が採用される。20-50merは、有機合成法か培養法のいずれかが選択される。例えば、糖尿病治療でよく知られるインスリンは51merで、培養法で生産後、多くの分離プロセスを経て精製後、医薬品原薬となり製剤化される。
ペプチド合成法 ペプチド合成法はSPPSとLPPSに大別される。1984年のノーベル賞受賞者メリフィールドが開発したSPPSは、自動化が容易なことから、ペプチド合成機という形で市販され、ペプチド製造法の主流となっている。しかし、SPPSは縮合剤や保護アミノ酸などの試薬を過剰(一般には2.0当量)使用することから高コストであり、また反応容器でバッチサイズが決定してしまうことから、大量生産に向いている訳ではない。一方、LPPSは古典的な方法であるものの工程毎に反応条件の最適化が可能であり、大量生産が容易であることから、GMP製造に適している。しかし一般にLPPSでは残基数5個(5mer)以上のペプチドの製造において、生成物(保護ペプチド、脱保護ペプチド)が結晶化しにくく、工程毎の固液分離、精製が困難であることが課題となっている。またペプチドの構成成分であるアミノ酸の側鎖を自在に構造変換させるペプチド修飾技術はこれまで確立されていなかった。
ヘルパーT細胞 免疫応答に関与するリンパ球「T細胞」の1つ。アレルゲンの情報をB細胞へ伝え、アレルギー抗体の産生を誘導し、炎症を誘導する液性因子を放出することにより、生体防御反応・炎症反応の司令塔として働くT細胞。
ポリスルホン膜 高機能樹脂に広く使われている耐熱性ポリマーを基本素材として作られたポリスルホン樹脂を使用した半透膜。人工腎臓用に中空糸型に成型されたポリスルホン膜中空糸は、尿素等の小分子量物質から、β2-ミクログロブリンなどの低分子量タンパク質まで、血液中の除去対象物質の範囲が広いことから除去性能が高い他、一般的に血液適合性を有します。
ミオイノシトール ブドウ糖と良く似た形の糖であり、細胞の中にあって、神経の作用を助ける働きをしている。体の中で作られるとともに食物からも摂取されて体内には多く存在する。正常な人でも、尿 1000mLあたり20mg前後のミオイノシトールが排泄されるが、ブドウ糖負荷を行ってもその量はほとんど変化しない。一方、糖尿病患者では、負荷後の量が5倍から10倍に増加する。
ミセル化ナノ粒子 親水性ポリマー(ポリエチレングリコール)と疎水性ポリマー(ポリアミノ酸誘導体)を分子レベルで結合させた両親媒性の性質を有するブロックコポリマーからなる、コア(内核)とシェル(外殻)を持った二層構造のナノメートルサイズの超微細な粒子。当該粒子は、薬物を安定に内核へ保持することができ、薬物の溶解性や血中での安定性を向上させる。また、ブロックコポリマーを加工することで粒子のサイズや薬物の放出を制御できる。
メタボリック症候群 内臓脂肪型の肥満に高血圧や高血糖、高脂血症が重なった状態。血圧など個々の検査値が飛び抜けて悪くなくても、重複することで糖尿病をはじめとする生活習慣病や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中などの危険性が高まる。 厚生労働省は内臓脂肪型の肥満の判断基準として、へそ周りを男性八十五センチ以上、女性九十センチ以上と定めている。これに加え、高血圧、高血糖、高脂血の三項目のうち二つ以上に当てはまればメタボリック症候群、一つなら同予備軍とされる。
メチル化酵素 S-アデノシルメチオニンのメチル基をヒストンタンパク質へ転移する反応を触媒する。
モニタリング CRA(Clinical Research Associateの略語、一般的には「モニター」と称します)が臨床試験の依頼者(製薬会社またはCRO)により指名され、試験の進行状況を調査し、試験が臨床試験(治験)実施計画書、業務手順書、薬事法に規定する基準等に沿って実施、記録及び報告されることを保証する業務です。
リガンド 機能タンパク質に特異的に結合する物質
リバースプロテオミクス 薬の開発では一般的に、まず病気の発症などに関連するたんぱく質を特定し、各社が持つ数十万種類の化合物の中からこのたんぱく質に作用する化合物を選び出します。「リバースプロテオミクス」はこれと逆の発想で、薬や新薬候補化合物を先に注目し、これらの標的となるたんぱく質を探し出す研究手法です。
レトロウイルスベクター レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとする約0.1 μmのウイルスで、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。遺伝子治療用ベクターとして、レトロウイルスの一種であるマウス白血病ウイルス(MoMLV:Moloney murine leukemia virus)を特別な細胞の中でのみ増殖できるように改変し、自己増殖能を奪ったものが広く用いられています。このベクターを使用すれば種々の細胞に遺伝子導入を行うことができ、安定した形質発現が期待できます。ベクターとは、細胞外から内部へ遺伝子を導入する際の「運び屋」を指します。ウイルス由来のベクターは、遺伝子導入効率の高さから盛んに開発されてきました。ここでは、目的遺伝子をウイルスに組み込み、細胞に感染させることにより遺伝子を導入します。レトロウイルスベクターは、このウィルスベクターの1種類として確立されたもので、宿主の細胞に感染したあと、宿主のDNAの中に入り込み、自らのウイルスを増殖させる性質を利用するものです。
レニン-アンジオテンシン系の阻害剤 血圧の上昇に関わるレニン―アンジオテンシン系の役割を阻害するもの。降圧剤として広く使用されているが、心臓や腎臓の臓器保護の効果にも注目が集まっている。アンジオテンシン受容体拮抗薬とACE阻害剤がある。
レノックス・ガストー症候群(LGS) 全般てんかんの重篤な状態で、脳出血、脳炎、脳の発育不全、脳の代謝異常など種々の脳障害により、小児の早期から発症します。発育遅延、行動障害、および持続して筋肉が収縮する強直(きょうちょく)発作を主体とする一方、複数の発作型を示すのもレノックス・ガストー症候群の特徴です。例えば、一部の筋肉が短時間不随意に収縮するミオクロニー発作や、短時間意識が消失する欠神発作などがあります。薬物療法でコントロールが難しい場合は、まれに外科手術が行なわれることがあります。 現在、欧州(オーストリア、デンマーク、フィンランド、 フランス、ドイツ、イタリア、アイルランド、スペイン、スウェーデンおよびイギリス)におけるLGSの患者数は約11,000人と言われていますが、完治することはきわめて難しいとされており、新薬の開発が望まれている疾患のひとつです。
遺伝子ファミリー DNA配列が似た複数の遺伝子。多くの場合、遺伝子ファミリーは機能も似通っている。
遺伝子治療薬(gene medicine) 遺伝子または遺伝子の一部を有効成分とする医薬品
遺伝子導入ベクター 遺伝子導入ベクター細胞などに目的の遺伝子を導入する際に利用する運び手の総称。導入するDNA断片の大きさや用途によって、ウイルスやプラスミド、人工染色体などを使い分けて用いられる。
一酸化窒素(NO:Nitric oxide) 一酸化窒素合成酵素の作用により、L-アルギニンと酸素から生成します。血管弛緩作用や神経細胞の情報伝達などの生理活性が知られています。血管新生作用、血管透過性亢進作用、発痛作用、プロスタグランジン合成促進作用を介して各種炎症に関与するため、過剰に産生されると組織の障害が引き起こされます。
核酸医薬 病気の原因となる遺伝子やたんぱく質の働きを妨げるため、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を構成する塩基配列を人工的に組み換えて作る新タイプの医薬品。がんや自己免疫疾患など様々な病気を対象に研究開発が進んでいる。 実用化への課題は核酸を狙い通り細胞に送り届ける技術。本来、体内にある成分で作るため、体に入ると分解してしまう。製薬・化学会社でナノテクノロジーを駆使した送達用微粒子の開発競争も進んでいる。
肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor:HGF) 肝細胞から発見された増殖因子で、血管新生作用を有する他、発生過程における器官形成や傷害に伴う組織・器官の再生において重要な役割を担う。
機能性RNA 遺伝子解析技術の最近の進歩により、DNAから転写されるRNAのうち、RNAそのものが他のRNAやタンパクなどに作用するものが幾つも発見されてきており、これを機能性RNAと呼びます。これまでは、RNAはmRNA(メッセンジャーRNA)に代表されるように、タンパクを合成するDNAからの暗号を伝達する役目が大半と考えられていました。
虚血性心疾患(ischemic heart disease) 心臓を養う動脈(冠動脈)がある程度狭窄すると、労作時に十分な血液が流れず、胸苦しさとか胸痛などの症状を示す狭心症や、冠動脈が完全閉塞し、心筋組織が虚血状態になる心筋梗塞などがある。
菌状息肉症 CTCLのなかで最も高頻度に見られ、日本ではCTCL患者様の50%以上が菌状息肉症です。発生原因は明らかではなく、初期には湿疹に類似した紅斑が、腹部や腰、大腿部、背中等に見られます(紅斑期)。多発や再発を繰り返しながら、紅斑期から扁平浸潤期へと徐々に進行し、場合によっては腫瘍期へと移行し、リンパ節や内臓への転移が認められると予後不良となります。腫瘍期に進行しなければ比較的悪性度の低いリンパ腫です。
血液前駆細胞 造血幹細胞から分化が一段進んだ細胞。赤血球、白血球、血小板等の多様な血球細胞への分化が可能な細胞。幹細胞と異なり、自己複製能を有していない。
固液分離 医薬品製造において、高純度、高品質製品の提供に繋がる分離精製は、極めて重要である。高温下化合物を溶媒に溶解させた溶液を徐々に冷却させた際、温度低下に伴い結晶が析出する現象や、溶液に溶解度を下げる溶媒(貧溶媒という)を加えることで析出する現象を利用して、析出した結晶と溶液とを濾過することで分離する方法。医薬品の製造プロセスでは、不純物、夾雑物を除去する方法としてよく用いられる。
公知申請 医薬品(効能・効果追加等)の承認申請に関して、その医薬品の有効性や安全性が医学薬学上公知であるとして、臨床試験の全部または一部を新たに実施することなく行う申請
抗血栓性 血液と接触する医療用材料には、血液の凝固(血栓)を防ぐ抗血栓性が求められています。血液は異物と接触すると生体防御反応として、血液中のタンパク質が異物の表面に付着し、それが引き金となって血栓形成反応が誘発されます。血栓形成はカテーテルや人工血管・透析膜等を詰らせることにより、性能劣化にとどまらず、血液の流れを物理的に遮断してしまうことで、治療の中断につながる場合もあります。
骨髄異形成症候群 血液の量及び質が変化し、貧血から白血病に移行する病態の総称。その原因は特定されていないが、造血細胞が血球をつくるときに、成熟がうまくいかず、能力のない血球になってしまうために起こると考えられている。
細胞記憶 細胞記憶,個々の細胞の遺伝子発現パターンの差異が、細胞分裂を経ても安定に維持されること。分化状態にある細胞において、遺伝子領域のヒストンのメチル化が維持されていること。
細胞質ダイニン 微小管モーター蛋白質。キネシンとは逆に、細胞質ダイニンは微小管の上を−から+方向に走ることにより、さまざまなものを微小管の+端へと輸送する。
治療標的分子 病気に特徴的な分子で、薬が作用するターゲットとなる分子。
自己免疫疾患 異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を引き起こす疾患の総称。
質量分析機器 微量の資料を真空中で電子衝撃などによって分解すると、電荷を帯びたフラグメントイオンが生成します。このイオンを質量数/電荷数(m/z)に従って分離し、相対強度を記録してそれらをm/z順に並べたものが質量スペクトルです。この分析を行う機器が質量分析機器。蛋白質の場合、その構成ペプタイド・フラグメントの質量数をもとに遺伝子配列データベースを検索することにより蛋白質を推定できます。
樹状細胞 マクロファージのように菌体を認識してサイトカインを放出するほか、T細胞に抗原を提示して抗原特異的なT細胞を活性化する働きがある。
樹状細胞(Dendritic Cell; DC) 免疫細胞の1つで、樹枝状の形態を呈しており、高い抗原提示能を有する。血液、体液中をたえず移動し、種々の組織に分布する。癌細胞やウイルス感染細胞などの異物を貪食し、それらを分解して細胞表面に特異抗原を発現することで、リンパ球を介して効率的に免疫反応が誘導されます。
樹状細胞療法 樹状細胞を用いた免疫細胞療法で、体内でがん細胞を特異的に攻撃するTリンパ球を誘導し、攻撃させる治療方法。樹状細胞は、がん細胞に由来するたんぱく質を貪食し、それをがん抗原としてT リンパ球に提示することにより、がん細胞を特異的に攻撃するT リンパ球を誘導する働きをするため、大量のがん抗原を樹状細胞に取り込ませることが、特異的なTリンパ球を大量誘導し、さらにはより有効な治療結果が得られるかに大きな影響を及ぼす。がん抗原ペプチドまたは患者自身のがん組織等を利用し、あらかじめがん抗原を認識させた樹状細胞を投与する樹状細胞ワクチン療法と、貪食作用を保持した、言わば未熟な樹状細胞をがん病巣に直接注入する樹状細胞腫瘍内局注療法などがあり、他の免疫細胞療法と同様に、患者への身体の負担は非常に軽微です。
消化管間質腫瘍(GIST:Gastrointestinal Stromal Tumors) 消化管に発生する肉腫のうち、最も発症頻度の高いものです。胃か小腸の原発がほとんどです。GISTは、他臓器に転移したり、根治的切除が不可能な場合、生命を脅かす可能性のある悪性腫瘍です。GISTの罹患率は、100万人あたり、年間11人から20人と推計されています。米国では、年間約4,500から6,000人が新たにGISTの診断を受けるとされています。そのうち約1,500人が、最初の診断の時点で既に転移を起こしています。GISTは診断が難しく、しばしば他の疾患を検査する際に、偶然発見されます。
症例登録・試験進捗管理 実施医療機関において臨床試験が試験実施計画書に沿って実施され、当該試験が円滑に進められるようにサポートする業務です。
症例報告書 調査票、CRF(Case Report Form)ともいいます。各被験者に関して、臨床試験依頼者に報告することが試験実施計画書において規定されている全ての情報を記録するための印刷されたまたは光学的若しくは電子的な記録様式及びこれらに記録されたものです。
心不全 心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身の組織に十分な血流を維持することができない場合に生じます。心臓発作とは違い、心不全は心筋が弱ったにもかかわらず、全身の血流を維持するために心筋にさらに負荷をかけるため、しだいに症状が悪化します。心臓のポンプ機能が正常に働かなくなると、軽い運動でさえ、息切れや呼吸困難を引き起こします。心臓再同期療法は左右心室の収縮のズレを調整し、全身の血流を増加させます。150万人以上の日本人が心不全に苦しみ、主要な心臓疾患の中で唯一増加の一途をたどっており、医療システムへの負担がますます重くなってきています。
深部静脈血栓症 深部静脈血栓症は大静脈の血栓によって引き起こされ、壊れた血栓が肺に移行すると肺塞栓症を引き起こします。深部静脈血栓症の兆候は通常、一肢に現れ、痛み、圧痛、膨れ、発赤を合併します。しかし、この病気と診断された患者の半数は全く兆候を示しません。
神経変性疾患 特定の神経細胞が徐々に死んでいき、運動機能や認知機能に障害がもたらされる。アルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病などがある。網膜変性疾患は眼科で扱われる疾患だが、こうした神経変性疾患の一種でもある。
親和性成熟とクラススイッチ 抗体分子には親和性成熟とクラススイッチという機能修飾が起こる。親和性成熟とは、抗体分子の抗原に対する親和性が抗原刺激により増すことで、クラススイッチとは抗体分子の重鎖定常領域が置換されることにより、抗原特異性を保持したまま、その機能が変化することを言う。
人工腎臓 腎不全患者の血液体外循環療法に用いる透析療法用の透析器。患者の血液中に存在する老廃物を半透膜の拡散原理を利用して除去する一方、体内にたまった余分な水分も除きます。平膜と中空糸膜タイプがあり、現在の主流は中空糸膜約1万本が束ねられた中空糸型となっています。
人工腎臓(ダイアライザー) 血液を体外に誘導し、中空糸膜を介して血液と透析液を接触させ、本来尿中に排出さ せる尿素、クレアチニン、尿酸などの老廃物を除去して浄化された血液を体内に戻す 療法を人工透析といい、この治療を行う際の血液と透析液を接触させるための半透膜 を容器に組み込んだものが人工腎臓です。現在国内で約26万人が人工腎臓等による治 療を受けており、1回4〜5時間、週3回の治療が必要です。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)(induced pluripotent stem cell) 体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES細胞に類似した多能性幹細胞。2006年に本研究グループにより樹立されました。
生体適合性 人工材料と血液とが接触した際に起こる生体防御反応である炎症反応による、サイトカインの活性や酸化ストレスの亢進、血栓形成を誘発しない等のことです。透析療法における生体適合性とは、血小板等の血液成分が透析膜表面に付着する生体防御反応の抑制、補体の活性化や白血球の一過性の減少を伴わないこと等をいいます。
静脈血栓塞栓症 静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症(主に下肢の深部静脈に血栓ができる病態)と肺血栓塞栓症(深部静脈に形成された血栓が肺動脈に飛んで肺動脈が塞がれ、重篤な場合死に至る疾患)といった一連の病態の総称です。近年、飛行機などによる長時間の移動中に発症したというニュースでも話題となっているエコノミークラス症候群は静脈血栓塞栓症の一病態です。しかしながら、静脈血栓塞栓症は、実態としては病院において手術に伴って発症するケースが多くを占めます。特に股関節置換術・膝関節置換術等の下肢の手術後は、深部静脈血栓症の発症率が34〜65%1)と高く、ひとたび急性肺血栓塞栓症を発症すると、死亡率は約30%とされ、死亡例の40%以上が発症1時間以内に死にいたる深刻な疾患2)です。発症してからでは救命が困難なため、その予防の重要性が指摘されています。
静脈血栓塞栓症(VTE:Venous Thromboembolism) 深部静脈血栓症と肺塞栓症を併せた総称です。肺塞栓症のほとんどのケースが深部静脈血栓症に起因しているため、二つの疾病を一つの疾病として静脈血栓塞栓症と呼ばれています。
線維化 炎症性疾患に共通する終末形態。難治性の代謝性疾患、消化器疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、神経性疾患等、多岐に渡り、最終的に臓器の機能不全に陥る。欧米における死亡の約45%が線維化に起因するとの統計が最近報告されている。
前駆物質 代謝され薬効を発揮する前の物質のことを意味します。ドパミンは血液脳関門を通過できないため、通過できるようドパミンを化学的に修飾したレボドパが治療薬として用いられています。
造血幹細胞 赤血球、白血球、血小板等のあらゆる血球系細胞を一生涯にわたって作り続ける細胞であり、自己複製も可能な細胞。
体性幹細胞 各臓器にごく少数存在し、細胞を生み出す工場的な役割を持つ根幹となる細胞。未だ未解明の点が多く、世界中で精力的に研究されているテーマである。
単一卵胞周期率 平均径16o以上の卵胞が確実に1個あり、その他に平均径12o以上の卵胞が無い症例の割合。 単一卵胞周期で妊娠した場合には原則として単胎妊娠が得られ,多胎による妊娠,出産,胎児に関連したリスクを予防することが可能となります。また,卵巣が過剰に刺激された場合に発現する副作用の卵巣過剰刺激症候群の予防にも効果があります。
長期収載医薬品 新薬の開発から長期間経過した、日本市場で入手できる先発医薬品をいいます。長期収載医薬品は、次のようにも分類されます。1・特許保護のあるもの、2・特許切れだが、市場に競合する後発品のないもの、3・特許切れで市場に競合する後発品のあるもの
転写因子 遺伝子の近傍に結合し、その遺伝子の発現(RNAへの転写)を調節する一群のタンパク質。遺伝子のスイッチの本体。iPS化に用いる4種類の遺伝子は、全て転写因子をコードすることからもその重要性がうかがえる。
糖鎖 主にブドウ糖が樹状につながった生体分子。途中で枝分かれする複雑な構造をしているため、合成が難しい。 細胞の表面に存在し、たんぱく質や脂質と結合している。ほかの細胞やホルモンとくっついて生体内の情報をやりとりする。
統合失調症 統合失調症は主に青年期後期に発症し、生涯にわたって症状が継続する精神疾患で、全世界の人口の1%以上が罹患しています。最もよく知られる症状は幻覚や妄想などの陽性症状ですが、社会性や意欲の低下(陰性症状)、注意障害や記憶障害のような認知機能等の他の精神機能にも影響を与えます。現在の抗精神薬は、主に陽性症状の軽減に効果を示しますが、陰性症状あるいは認知機能障害にはほとんど効果を示しません。また、これらの薬剤では十分な効果が期待できないのみならず、鎮静、便秘、めまい、膀胱調節機能不全に加え、動作不穏、体重増加、代謝性症状(糖尿病・脂質代謝異常)などの副作用が好発することが知られています。統合失調症を発症した患者において、一定の正常な社会性を取り戻すことは稀であり、本疾患における医療ニーズは非常に大きくなっています。
特殊アミノ酸 一般に、天然型アミノ酸として20種が知られるが、そのうち人の体内で作ることが出来ないアミノ酸は8種ありこれを必須アミノ酸と呼ぶ。これらのアミノ酸のほとんどは光学活性を持ち、L-アミノ酸と呼ばれている。特殊アミノ酸は、上記20種以外の化学構造を持つ非天然型アミノ酸と天然に存在するL-アミノ酸と逆の光学活性を持つD-アミノ酸から成るアミノ酸類の総称。これらは、医薬品の骨格に組み込まれることで、その生理活性を持続させたり立体構造を改変して生理活性を高める目的に使用されている。
肺塞栓症 肺塞栓症は壊れた血栓が肺動脈あるいはその分枝を閉塞し、肺動脈循環障害を来たした状態で、場合によっては死に至る可能性のある疾病です。主な兆候は呼吸時の息切れや胸痛です。深部静脈血栓症の約3割は、血栓が肺に移行して肺塞栓症を発症するといわれています。
肺動脈性肺高血圧症 心臓と肺をつなぐ肺動脈が過度に縮んで、血圧が上がる病気。肺に送り込む血液の量が減るため、息切れや胸の痛みなどを引き起こす。悪化すると死亡する場合もある。原因が不明で肺動脈の血圧が上がる場合は原発性肺高血圧症と呼ぶ。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID) 抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称。疼痛、発熱、炎症の治療に用いられる。アスピリンなどのサリチル酸、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェンなどで、多くはシクロオキシゲナーゼ(COX−1、COX−2)活性を阻害することでプロスタグランジン合成を抑制する。
非臨床 製薬会社が、創薬の過程で主に動物を使って科学的性質を調べ、安全性などを検討する試験の仲介及び研究用資材、動物の提供等を行う事業です。
微小管 細胞内で、キネシンや細胞質ダイニンなどのモーター蛋白質が走るための線路として働く。神経軸索では、微小管は細胞体から軸索末端方向に極性をもって伸びている(細胞側が−、軸索末端が+)。
不整脈 健康な大人の心拍数は60〜100拍/分ですが、何らかの理由で心拍数が速くなったり、乱れたり、遅くなったりすることがあります。心拍数が異常に速く1分間に100拍を超えるものを「頻脈性不整脈」、心拍数が1分間に50拍未満の遅いものを「徐脈性不整脈」、脈が飛んだりしてリズムが乱れることを「期外収縮」といいます。このような脈の異常を、一般に「不整脈」と総称しています。
末梢性血管疾患(peripheral arterial disease) 四肢の末梢血管が閉塞することにより、筋肉や皮膚組織が虚血状態に陥り、しびれ、冷感、間歇性跛行、安静時疼痛、下肢潰瘍などの症状を示す。閉塞性動脈硬化症やバージャー病等がある。
慢性腎臓病(CKD) CKDとはChronic Kidney Diseaseの略。世界的な腎臓病問題の危機に対処すべく近年作られた疾患概念で、従来の腎臓病の総称。慢性腎不全、人工透析、腎移植に至る腎疾患全てを含み、GFRという指標の値により病気の進展度合いが判断される。
無増悪生存期間 無増悪生存期間 (progression-free survival) とは増悪か死亡のうち早いほうまでの期間を指します。
網膜色素上皮細胞 網膜色素上皮細胞眼にある網膜の構成細胞の一つ。
戻し交配 異なる系統のマウスを交配して得られた産仔を、再度片方の系統のマウスと交配すること。特定の遺伝子変異を有するマウスの遺伝子背景を変更する際には、通常10世代以上に渡って戻し交配される。今回は、CBA系統とC57BL/6系統のF1系統で作製されたAID欠損マウスの遺伝子背景をBALB/c系統に変更するために、BALB/c系統に10世代に渡り戻し交配された。
薬物動態 薬物がどのように生体内で処理されるのかを明らかにする試験で、通常、血液中(場合によっては尿中又は組織中)の薬物及びその代謝物の濃度の経時的な測定を伴います。薬物動態試験により血液中又は他の適切な部位における薬物の吸収、分布、代謝及び排泄を特徴づけられ、PK(Pharmacokinetic)試験とも呼ばれます。
抑制性T細胞(Treg) CD4陽性ヘルパーT細胞の一種で、免疫抑制機能を有する。自己に対する免疫応答を抑制するほか、IL−10などの抗炎症性サイトカインを分泌し、炎症を抑制する機能も持つ。
流涙症 眼疾患の一つで、涙が眼より常に溢れている症状をいいます。 涙の排出経路(涙道)の狭窄・閉塞などが要因の一つです。
臨床試験実施計画書(プロトコール) 臨床試験の依頼者(製薬会社等)が作成するもので、試験の目的、試験デザイン、方法、統計学的な考察及び組織・責任体制について記載した文書です。
胚性幹細胞(ES細胞)(Embryonic stem cell) 受精後1週間前後の胚から樹立される幹細胞で、成体に存在するすべての細胞へと分化できる多能性(万能性)を維持したまま、ほぼ無限に増殖が可能な細胞。ES細胞は1981年にマウスにおいて樹立され、1998年にはヒトでも樹立されました。
顆粒細胞平行線維−プルキンエ細胞間シナプス(平行線維シナプス) 小脳顆粒細胞とプルキンエ細胞によって形成された、小脳神経回路の要衝を担う興奮性シナプス。

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