現在までに生み出された新薬の多くは、生命科学の発展とそれに伴う様々な技術革新の貢献によって創り出されてきました。1980 年代以降で見ても、科学的・医学的な新知見や新発見を基に、ACE
阻害剤、HMG-CoA 還元酵素阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、PPARγ作動薬など、数多くの新薬が誕生しています。
また、バイオテクノロジーの医薬品への応用の道を開いたといえる1970 年代に生まれた遺伝子組み換え技術、モノクローナル抗体の作成技術などは、組換え蛋白医薬品や抗体医薬品の誕生に結びついています。
今後は、バイオインフォマティックス、プロテオミクス、ゲノミクスといった新規技術を活用し、標的分子に狙いを定めた薬剤の設計や遺伝子解析、蛋白質の高速大量解析が進められ、新しいタイプの新薬が開発されていくことが期待されています。
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(創薬の業務) |
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(情報BOX) |
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@創薬ターゲットの探索
最新の研究動向・成果からどのような疾患、薬効メカニズムを対象とするかを決定します。例えば、摂食を活発化するタンパク質因子が発見されたとします。そのタンパク質因子の機能阻害薬を肥満治療薬としての開発のテーブルに乗せる。これが「標的の同定」の1例です。 |
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Aターゲットバリデーション:標的の確定
実際に疾患モデル動物などを用い、標的の妥当性を検証します。例えば、糖尿病を標的にした場合、血糖値を下げる働きをする受容体が見出されたとします。この受容体に対するリガンド12が実際に血糖値を下げる働きをするか、糖尿病モデル動物を使って、作用の確認を行うといったことが標的の確定に該当します。このプロセスでは、ADME(薬物の吸収、分布、代謝、排泄)など疾患シミュレーション手法の活用余地があります。 |
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B探索スクリーニング
標的領域で作用を発揮する化合物群を創出するプロセスです。状況によっては、研究途上でドロップする可能性もあるので、多数の化合物を合成し、スクリーニングを行います。最近では、高速自動合成スクリーニングシステム(HTS)やバーチャルスクリーニングの導入により、自動・省力化と短期に多種化合物創製能力の向上が図られています。
製薬会社は、これまで作って来た自社化合物や、業者から購入した化合物を数百万個持っています(これを化合物ライブラリと呼んでます)。この化合物ライブラリのなかから、新薬の元となる化合物を探し出すことから宝探しは始まります。このように、薬の構造とかにはこだわらず、すべての化合物について化合物の作用を調べるやりかたを「ランダムスクリーニング」と呼んでいます。 |
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Cリード化合物の特定
ランダムスクリーニングで見つかった化合物が、そのまま新薬になることはほとんどありません。通常は、まず化合物ライブラリの中で最も活性があり、扱いやすい化合物を見つけます(これを「リード化合物」と呼びます)。次に合成屋さんがリード化合物に手を加え、どんどん活性が高く、安全で、取り扱いやすい化合物を作っていきます。 |
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Dリード化合物の最適化
創製された多数の化合物の中から、薬効、薬効持続性、投与経路・回数、溶解性など、多面的な視点から、より薬として適切な化合物群を絞り込んでいくプロセスです。短期に多種の化合物を手にすることが容易になったことで、このプロセスの重要性が増しています。 |
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用語説明 |
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化合物ライブラリー
化合物を合成、培養、抽出などにより広範に収 集し、数十万から数百万の化合物群からなる ライブラリーを作成します。
化合物ライブラリーは、自社創成のほか、試薬会社から市販品として購入したり、大学研究者等により合成されるあるいは合成された化合物を独自のルートで入手し構築しています。
スクリーニング
化合物ライブラリーの中から、ハイスループット・スクリーニングなどの手法を用いて、新薬のもととなるリード化合物を見つけだします。
ランダム・スクリーニング
薬の構造とかにはこだわらず、すべての化合物について化合物の作用を調べるやりかたです。何万もの化合物を片っ端から調べる方法です。
ランダム・スクリーニングによって、製薬会社が保有する化合物ライブラリのなかから、新薬の元となる化合物を探し出します(これを「ヒット化合物」と呼びます)。
ランダムスクリーニングにより得られた「ヒット化合物」が、そのまま新薬になることはほとんどありません。通常は、まず化合物ライブラリの中で最も活性があり、扱いやすい化合物を見つけます(これを「リード化合物」と呼びます)。
ハイスループット・スクリーニング(HTS)
HTSでは、ロボットによる自動化が行なわれ、大量のサンプルをすばやく評価します。
従来、スクリーニング・アッセーは人手により行われていたため、スクリーニングのスピードはせいぜい数十〜数百アッセー/人/日でした。しかし近年では、アッセー系を微量化し、スクリーニングにおけるサンプリング、反応等の各ステップをコンピュータ制御により機械化・自動化するHTSによる全自動化が可能となりました。その結果、スクリーニングの処理スピードは飛躍的に増大し、現在では数千アッセー/ロボット/日となり、数十万アッセーも数カ月で完了できるようになりました。また、人手によるスクリーニング時代では必要とする生理活性を有するヒット化合物は一桁程度であったものが、HTSの登場により数十〜数百に増加しています。
ランダムスクリーニングを極めて効率的に実施しようとするのがHTSということになります。
ハイスループットスクリーニング装置は、製薬会社が自然界から採取、または人工的に合成した膨大な数の化合物に、病気を引き起こすたんぱく質などの体内物質を次々と混ぜて反応するかどうかを分析します。最新の装置は一分間に千五百種類以上の化合物の処理ができるといいます。
バーチャルスクリーニング
ヒット化合物を得るためには、ランダムスクリーニングのほか、ターゲットの蛋白情報およびリガンド・阻害剤等に関する情報を利用して、活性中心等に結合する可能性のある化合物を、種々の化合物データベースの中からコンピュータによりスクリーニングし、候補化合物を入手または合成し、実際の阻害活性等を測定するバーチャルスクリーニングも近年盛んに行われつつあります。
コンビナトリアル・ケミストリー(コンビナトリアル合成)
大量多様な新規化合物を、ロボットアームによって、自動的に高速で合成する技術です。
合成化学者は、数百万個の化合物から選ばれたリード化合物の構造の一部を変えた化合物を、どんどん合成します。コンビナトリアル合成を用いれば、一回の反応でリード化合物から数十個の誘導体ができたりします。
ドラッグ・デザイン
コンビナトリアル・ケミストリーによって、ただやたらに周辺化合物を作り出しても、後でその中から有益な化合物をスクリーニングするのに時間がかかるだけで無意味です。
化合物の合成においては、効果的・効率的に行うことが重要です。ドラッグ・デザインは、薬効を発揮する化学構造の仮説を考えて、実際に合成した化合物で証明するという過程を繰り返し、薬物設計を完成させる試みです。
最近は、ドラッグ・デザインにコンピュータ・グラフィックを利用します。 |
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参考になるサイト |
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ゲノム情報を活用し、医薬品を論理的・効率的に作り出すことをゲノム創薬と言います。ゲノムの解読が進むにつれて、数多くの疾患、癌や糖尿病、高血圧などに遺伝子が関連していることが明らかになってきました。ゲノムの解析により、病気の原因や薬物応答の個人差の原因となる遺伝子をみつけ、より効果が高く、副作用の少ない医薬品がゲノム創薬によって作られることが期待されます。 |
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用語説明 |
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ゲノム解析
ゲノム解析とは、生物のゲノムのもつ遺伝情報を総合的に解析することです。
ゲノム解析では時に10億以上にもつながった塩基の配列をいろいろな観点から解析する必要がありますのでコンピュータの使用が不可欠です。コンピュータによってゲノムデータをはじめとする生物情報を解析する分野をバイオインフォマティクスと呼びます。
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プロテオーム解析
生物のもつタンパク質の構造や機能を網羅的に解析することをプロテオーム解析といいます。
「プロテオーム(proteome)」とはprotein(タンパク質)とgenome(ゲノム)を組み合わせた造語です。ゲノムが一個の生物の持つ全ての遺伝情報を指すのに対し、プロテオームは、細胞内で発現している(発現する可能性をもつ)全タンパク質のことを指します。 |
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レポート |
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情報発信サイト |
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バイオテクノロジーとは「バイオロジー(生物学)」と「テクノロジー(科学技術)」を合成した言葉で、「生物工学」又は「生命工学」などと訳されています。生物及びその生物の持つ機能を解明し、その働きを我々の生活に役立てようとする技術です。最近では、遺伝子治療、クローン技術など、様々な分野での応用が進んでいます。 |
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インシリコ創薬は、医薬品の開発初期段階で、コンピューター上で新薬候補化合物を選別・設計する手法のことを言います。候補化合物の探索は現在、手当たり次第に実験を繰り返す「ランダムスクリーニング」と呼ぶ方法が一般的で、探索一回当たりの費用は数千万円にものぼると言われています。インシリコ創薬の手法を活用すれば実験数が少なくて済み、開発コストや期間を大幅に圧縮できると期待されています。
ただインシリコ技術は2000年代から注目され始めたばかりで、新薬開発の原動力となった例はまだありません。 |
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レポート |
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コンピュータ技術を使ってゲノムや生物学、化学に関するデータを保存、整理、生成、検索、分析、共有し、新薬開発プロセスを効率化する手法を言います。 |
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(情報BOX) |
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刊行物 |
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サイト |
提供 |
備考 |
公開情報DATA |
財団法人化学物質評価研究機構 |
安全性点検DATA、安全性氷解シート、生分解性予測システム |
ChemFinder |
ChemFinder.com |
化学物DB検索 |
PubMed |
NLM(アメリカ国立医学図書館) |
医学生物学文献データベース |
JDream |
独立行政法人科学技術振興機構(JST) |
科学技術文献情報の検索システム
JDreamは、JST Document REtrieval system for Academic and Medical fieldsの略。 |
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(1)有機化合物の種類(研究分野で分類される種類) |
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・天然物
油脂化合物(脂肪)
糖化合物(炭水化物)
ペプチド化合物(たんぱく質)
核酸化合物(DNA・RNA)
アルカロイド化合物
ステロイド化合物(テルペン化合物)
・生体内物質
酵素
基質
補酵素(ビタミン)
阻害剤(インヒビター)
受容体
アゴニスト
アンタゴニスト
ホルモン
ステロイドホルモン
ペプチドホルモン
伝達物質
神経伝達物質
オータコイド
セカンドメッセンジャー物質
抗生物質
海洋天然物 |
・高分子化合物
合成樹脂
エラストマー化合物(ゴム)
ゲル化合物
・コロイド化合物
・機能性分子(超分子)
包接化合物
シクロデキストリン
クラウンエーテル(クリプタント)
カリックスアレーン
人工酵素 |
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(2)リンク集 |
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